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□熱ノ浮力(ネツノフリョク)
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「先生、少しでいいから起きて下さいよ…!」
湯川が意識を手放した頃…薫は、懸命に彼を起こそうとしていた。
彼女は今、湯川宅の寝室にいる。
草薙に教えられたマンションは大学から近く、迷わずに着く事ができた。
彼女は車内でマンションの鍵を物色すると、支えて湯川宅の寝室まで運んだのだった。
「コートもスーツもマフラーもそのままじゃないですか…!」
ベッドに横たわる湯川に言うが反応はない…。
"…こんなんじゃ置いて帰るなんて出来ない…"
仕方なく、薫は湯川のコートに手をかけた――。
数分後…
薫はスーツとベストも同様に脱がせた所で手を止めた。
"――何ドキドキしてんのよ…。"
彼女は自分の顔に手を当てると、ため息をついた。