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□彼と彼女の適正距離
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「ならば…もう出なくてはいけないな。」
時刻は、午後11時を過ぎている。駅まではおよそ15分。普通に考えれば、急ぐべきだろう。

「―そうですね。」
しかし薫は、まだグラスを放さずにいる。

「―明日は、休みだったな。」
薫の手の中でカラリ、とグラスの氷が音を立てた。

「はい。もう、凄い久しぶりに。」

「予定はあるのか?」ジョッキに残った温いビールを一口飲むと、湯川が言った。
終電に乗るためには、今すぐに店を出なくてはならないのだが――。
 
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