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□Sweet honey
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「…へ、へぇ〜。」

「でも内海さんの―」
「はいっ。」

突然黒い物が目の前に差し出されて、渡辺はギョッとして言葉を切った。

「う、内海さん?」

「義理なの。先生にあげても仕方ないみたいだから、あげる。皆で一緒に食べていいよ。」

そう言うと、薫はニコリと笑ってみせた。
そんな薫の行動に、渡辺はしまったと顔色を変えた。

「駄目!駄目です内海さんっ…!これは先生に渡して下さい!」

「いいのいいの!義理なのに直接渡して断られるのって癪じゃない?だから、ねっ!」

薫は平たくて小さな箱を渡辺に押し付けると、そそくさとドアノブに手をかけた。

「じゃあ、よろしく!」
「内海さん…!」

渡辺はひき止めようとしたが、薫はドアの僅かな隙間からスルリと抜けると走って立ち去ってしまった。

手の平に乗った、ややいびつなラッピングが施された箱を見て、渡辺は顔を青くする。

"コレは絶対に義理じゃないでしょう…?!"

予想外な形で本命チョコを委ねられた渡辺は、扉の前で一人立ちすくんだ。
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