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□君がいても、いなくても
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『今、仕事が終りました。』
メールは薫からだった。湯川は暫く考えると、短い文を打った。
『お疲れ様。これからでも家へ来たらどうだ。』
そして送信する。
1分程後。返事が来た。
直ぐに文面を見る…。
素早く2回読むと、湯川はソファに沈みこんだ。
画面には、『必要な捜査資料を自宅に置いているので、今日は遠慮します。』とあった。
"よくもまぁ…これだけ理由が思いつくな…。"
湯川は今までに薫が述べた理由を思い返してみて、頭痛をおぼえた。
昨夜は、「捜査が家の近所だったので、そのまま帰宅します。」その前は「昨日の夕飯の残りを食べないと腐るので帰ります。」だった。
"避けられている…?イヤ、警戒しているだけか…?"
湯川は、どうしたものかと溜め息をつくと、さらに短くメールを打ってから携帯を閉じた。
片手に持ったままになっているマグカップのコーヒーは、とっくに冷めきっていた。
*****
それから更に数日後…
未だ、湯川の家に薫は訪れないままだった。
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