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□眠れる姫と聡明な狼
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薫は何も食べていないだろうと思った湯川は、寝室のハンガーに薫の上着を掛けながらメニューを考えていた。

せめて料理中は寝かせておいて置いてやろうと、毛布を片手にリビングへと戻る。

「…なっ?!」

ソファまで戻った湯川が、珍しく驚きの声を上げた。

「寝ぼけたか…」

眉間を押さえると、湯川は目を伏せて顔を歪ませた。見間違いであってほしいと、湯川は再度顔をあげて見た。しかし湯川の目の前には先程同様、"言われた通り"スーツを脱いだ薫の姿。
つまり、今の薫はワイシャツと下着しか身につけていなかった。

熟睡する薫の寝息が規則正しく繰り返されるのを、恨めしげに見る湯川。

脱いでいる途中で力尽きたのだろう、ワイシャツのボタンもいくつか外れていた。

「……」

湯川は自分もスーツの上着を脱ぐと、ソファにかけた。
そして薫の腰のあたりに空いたスペースを見つけると、自分はそこに腰かける。

「文句は、言えないだろう…?」



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