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□君がくれる場所
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先手を取った薫がゲーム機を操作しながらそう言うと、湯川は目を丸くした。

「――そんなつもりじゃない。文句だって毎回という事は…。」

そこまで言った所で、湯川は言葉を切った。そして自信を持って否定出来ないこれまでの言動を思い出し、眉間を押さえた。

思い起こしてみれば、嘘を言っていないだけで"女性に対して"の正しい反応は何一つしていない。
それどころか、感謝の言葉を述べた事すらなかった。

「―――…、すまない…。」
散々目を泳がせた湯川は、結局それしか言えなかった。


「…。」

プチン、と膨れっ面の薫がゲーム機の電源を切った。

無言で席を立つと、リビングの椅子に掛けてあった湯川のエプロンを付ける。

ただその様子を見ていた湯川だったが、薫が冷蔵庫から見覚えのない食材を取り出すのを見てハッとした。

「何か…手伝おうか。」

「…先生はそのまま本でも読んでてください。」

見向きもせず大鍋に水を張りだした薫に、湯川は「はい。」とだけ返事をした。


――…視線を本に戻してから数分が経つと、湯川の耳にコトコトと鍋が揺れる音と包丁の軽快なリズムが入ってきた。


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