□温かさを
1ページ/5ページ


「…ウソ……何で…無い、の…?」

地球温暖化が騒がれているとは思えないような寒さを記録した日。どこかのクリスマスソングのように天候が変わった。
ただ今日は、
クリスマスでもなければ、夜更け過ぎでもない。
僕らの予定が少しだけ変わった日。



【温かさを】



「僕の手袋知らない!?」

突如物凄い形相で準備室から出てきた僕を、驚きの表情または怪訝そうな表情で見ていた部員達は、その台詞に更に首を傾げた。

「手袋?その様なものを見た覚えはないな…」

殿がティーセットを片付ける手を止め、それをわざわざ顎に添えつつ言った。
その悠長な態度にまた僕のイラつきが積もる。


「無くしたのか?」

「無くしてないっ!!」

あ。しまった。

パソコンのキーボードを打つ手を止めずに涼しく聞いてきた鏡夜先輩が、何となく気に入らなくて、僕は声を荒げてしまった。
その声に反応し、鏡夜先輩の鋭い目線が液晶画面から僕へと変わる。

「…けど、見つかんない」

つい、少しだけたじろいで、言葉を付け足した。

「でもヒカちゃん。そういうのを“無くした”って言うんだよ?」

横を見れば、今度はハニー先輩の困った様な笑顔が向けられる。

わかってる、けど…っ!!


「〜〜〜う゛ー…」






「…特別な物なのか?」

不意に、低い声が僕の核心を衝いた。僕は反射的にそちらを見て、

「っ、モリせんぱーい!!」

遂にその大きな体へと泣きついたのであった。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ