文
□温かさを
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「…ウソ……何で…無い、の…?」
地球温暖化が騒がれているとは思えないような寒さを記録した日。どこかのクリスマスソングのように天候が変わった。
ただ今日は、
クリスマスでもなければ、夜更け過ぎでもない。
僕らの予定が少しだけ変わった日。
【温かさを】
「僕の手袋知らない!?」
突如物凄い形相で準備室から出てきた僕を、驚きの表情または怪訝そうな表情で見ていた部員達は、その台詞に更に首を傾げた。
「手袋?その様なものを見た覚えはないな…」
殿がティーセットを片付ける手を止め、それをわざわざ顎に添えつつ言った。
その悠長な態度にまた僕のイラつきが積もる。
「無くしたのか?」
「無くしてないっ!!」
あ。しまった。
パソコンのキーボードを打つ手を止めずに涼しく聞いてきた鏡夜先輩が、何となく気に入らなくて、僕は声を荒げてしまった。
その声に反応し、鏡夜先輩の鋭い目線が液晶画面から僕へと変わる。
「…けど、見つかんない」
つい、少しだけたじろいで、言葉を付け足した。
「でもヒカちゃん。そういうのを“無くした”って言うんだよ?」
横を見れば、今度はハニー先輩の困った様な笑顔が向けられる。
わかってる、けど…っ!!
「〜〜〜う゛ー…」
「…特別な物なのか?」
不意に、低い声が僕の核心を衝いた。僕は反射的にそちらを見て、
「っ、モリせんぱーい!!」
遂にその大きな体へと泣きついたのであった。
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