文
□温かさを
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* * * * *
「なるほど、馨とお揃いの手袋なわけだな?」
「そう!しかも去年のクリスマスにオーダーメイドしてお互いにプレゼントしたやつ!!」
手袋が特別である理由を話し終えると、片付けそっち退けで聞いていた殿、ハニー先輩、モリ先輩は思い思いに相づちを打った。
「だからすっごい大事な物なの!すっごい大事な物なのに…………、なんで見つかんないかな……最低」
最後の方は呟きに近かった。落胆と悲しみと苛つきを吐き出すように、小さく長い溜め息をつく。
だが、そんな感傷にひたる僕を後目に殿とハニー先輩は窓の外に目を向けていたようで…
「これはかなり降ってきましたね…」
「どのくらい積もるかなぁ?楽しみだねぇ」
「……ねぇ、ちょっと。話し聞いてた?」
2人が振り返る。
……。
……………。
…………………オイ。
「そうだねぇ。手袋無いと帰るのに寒いねぇ。ぼくのうさちゃん貸したげよっか?」
「いらない!!ていうか何今の沈黙!!」
「ふえっ…」
「光。ハニー先輩にまで当たるな」
「だって今のは完璧に話聞いてなかったでしょ!?」
「だってぇ…」
目を潤ませながらモリ先輩の影に隠れるハニー先輩を容赦無く睨む。
すると、突然その視線が遮ぎられた。
「そうだ光!俺は思い付いたぞ!!!」
お得意の、アホらしいキングポーズとやらで高々と宣言する殿によって。
何だかちょっと、嫌な予感がした。
「そんな物、もう一度作らせれば良いではないか!!」
やっぱり。
このアホは、どこまでも人の神経を逆なでする才能に長けているらしい。
「なんっもわかってないね!!話しになんない!だから殿はいつまでもハルヒにまでバカ殿扱いされるんだよ!!」
「なっ!!わかってないとは何だ!俺はバカではないぞ!?ましてやハルヒにそんな扱いをされた覚えはない!!」
「はいはい。知らぬが仏。触らぬ神に祟り無し。」
「おい光!折角人が相談にのってやってると言うのに!!俺は神でも仏でもない!…そう、俺はキングなのだ!!」
「意味わかんない。ねぇ本当にこの人頭良いの?」
「そいつはそれでも2年次席だが…話がズレてるぞ、光」
「っ、もう!殿のバカ!!」
「…鏡夜、“環に当たるな”とは言ってくれないのか…?」
「……」
湿気の有りそうなオーラを放ちながら部屋の角に向かっていじけている殿を無視して窓の外を見た。
さすがに、あまり時間は無さそうだ……でも、
僕は心を決めると、ソファーに掛けてあったコートとマフラーを引っ掴みその歩を扉へと向けた。
「ヒカちゃん?どこ行くの??」
「…探す」
「……え?」
「探す!!学校中!!」
「それは─」
「無理だ」
「無理だろう」
「無理だねぇ」
「……」
「何で!?」
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