きまぐれ小話5

□真夏のバカップル
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「………暑い!」
 
ベルは我慢出来ずに叫ぶ。
ここ最近、最高気温が35度以上という真夏日が続いていた。
 
 
「暑い暑い言うな、余計暑くなる」
 
隣で一緒に歩いているのは獄寺。
2人は並盛商店街に来ていた。
 
 
 
「デートは嬉しいけどぉ…どっか入んねぇ?涼しいトコ行きたい!」
 
「デートじゃねぇ!ただ夏服買いに行くっつったらついて来ただけだろっ」
 
まぁデートかどうかはともかく、デートっぽい感じで2人は店を回っていた。
 
店内はクーラーが効いていて涼しいが、外に出た途端に太陽が照り付ける。
ベルが叫ぶのも無理はないだろう。
 
 
 
 
「隼人、手繋がない?」
 
「断る」
 
見向きもせずに即答する獄寺。
こんな大勢の前で、冗談じゃない。
 
「え〜?この商店街で知り合いになんて会った事ないじゃん〜」
 
「………それもあるが…」
 
「が?」
 
「暑い」
 
「いや、暑いけど」
 
「だから、ひっつくな。暑苦しい」
 
「ちょっ、酷!王子を暑苦しい!?このっ……隼人のツンデレめ!」
 
「は!?ツンデレ!?」
 
「仕方ないから腕組むので我慢する」
 
「余計暑いわー!!」
 
そうこうしているうちに、あっという間に時間がたっていた。
 
 
 
 
「お腹空いたっ。何か食べようよ隼人」
 
「……まぁ、そうだな」
 
現在の時刻は午後1時過ぎ。
ちょうどピークを過ぎた辺りで並ぶ心配もないだろう。
 
 
「あれ…食べたい」
 
ふと、ベルが呟く。
彼の視線の先には、お勧めメニューとして看板に冷し中華が描かれていた。
 
「冷し中華か…」
 
こんな暑い日にはちょうどいいかもしれない。
 
獄寺も賛成し、その店に入るのだった。
 
 
 
 
 
「いらっしゃいませ〜」
 
女性が出迎える。
休日だからか、この時間にしてはまぁまぁ客が入っていた。
 
席を案内され、メニューを選ぶ。
 
「ラーメンもあんのか。…でもやっぱ冷し中華か」
 
獄寺がメニューを見ていると、ベルが“今月のオススメ”というページを見つけてはしゃぎ出した。
 
「隼人隼人っ、俺コレがいい!」
 
「何だ?……“愛の冷し中華”…?2人前ってあるぞ」
 
「だから、2人で一緒に食べんだよ。だってこれ、カップル用だもん」
 
「なっ……絶対ぇ嫌だ!誰がするか!大体、そんなん男同士でやってる奴らなんて………」
 
店内を見渡した瞬間、獄寺は驚愕した。
 
 
 
 
「はい、アーン」
 
「アー……って、確かハム好きだっただろぉ?おまえが食えぇ……いや、俺が食べさせてやる」
 
「ありがとなっ」
 
 
 
 
「…………………」
 
いた。
男同士で“愛の冷し中華”を食べている奴らが。
しかも斜め前の割と近くに。
 
そして何より…良く知った2人だった。
 
 
 
「って、テメェら!少しは人目も気にしやがれ!」
 
「あ"ぁ?なんだぁ、ベルに爆弾小僧じゃねーかぁ」
 
「獄寺にベル!おまえらもデートか?」
 
「違ぇ!!」
 
肯定しようとしたベルを押しのけ、全力で否定する獄寺であった。
 
 
 
 
結局、バカップルもとい山本とスクアーロ、そしてベルに押しに押され、店員にまで勧められ、頼まざるをえなくなった獄寺。
 
その“愛の冷し中華”は大きな皿に盛られ、どうやらそのまま食べるらしかった。
ご丁寧にテーブルを小さい物に変えて食べやすいようにしてくれた。
……取り皿もないのか…。
 
獄寺は、観念した。
だがもちろん、食べさせ合いなどは断固拒否したが。
 
 
 
 
さっさと食べたせいか、先に食べていたはずの山本とスクアーロのカップルとほぼ同時に食べ終えていた2人。
 
だがわずかに山本達の方が早く、立ち上がった。
そして会計に向かう。
 
………手を繋いで。
 
 
 
 
「ねぇ隼人…」
 
「何も言うな。あいつらが特別なんだ」
 
「え〜、でも…」
 
「そもそも会計まで行くだけで手を繋ぐか普通」
 
「でもいいなぁ〜……あ、別に隼人の照れ屋なトコも嫌いじゃないけどね」
 
「っ………」
 
照れ屋じゃねぇ!と叫びたいのを、店内だからとグッと我慢する獄寺であった。
 
 
そしてふと窓の外を見ると…………腕を組み歩いて行くバカップルが見えた。
 
ちょっと待て、外はかなり暑いはずだ。
冷し中華を食べたとてそれは変わらないはず。
というか、周りを気にしないのかあいつらは!
 
とりあえず、会計を済ませているベルには見えなくて幸いだった。
あれを見られようものなら、「じゃあ手繋ぐくらい、いいじゃん!」とかワガママ言いそうだ。
 
獄寺はため息をつき、しかしベルがヘタレになったらそれはそれで気味が悪いかもしれないと思うのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書き〜
スク山…段々バカップルにしすぎている気がします…。
いや、でも本当はもっともっと砂糖が作れるくらい甘くする予定だったのですが。
ベル獄は、なんだかんだで現状に満足してる感じで。
というか、スク山バカップルは周囲に多大なる影響を与えている気が……(「バカップルの効力」参照)
私の脳内では、スク山は常にハートを振り撒いています(笑)
2010.07.09

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