□けがれ
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あの日から連日、生徒会のメンバーは尋常でない量の仕事を強いられている。
自由になる時間はほとんどなく、依然として高成の行方の調査は前進していない。
何もできない灰音は閑雅の情に頼るしかなかった。

「お願いです!高成様の居場所を教えてください」
「教えたら灰音は高成のところへ行くんだろう?」
「それは…」
結果としてはそうなるだろう。しかし、問題はそこではない。
双児に産まれたために、そして表の後継ぎとして選ばれなかったために理不尽に生を奪われるということが許せないのだ。
高成を見つけ出したところで、法律制度から見放された彼をどう救えばいいのかなど、灰音には皆目わからない。
それでも、高成を見つけ出さなくてはならないのだ。愛のためか、ただの自己満足なのか。高成と生きるためには灰音自身も表で生きてゆくことを諦めなくてはならないかもしれない。しかし、その覚悟があると言い切る自信はまだなかった。




今、灰音は第二校舎の一階にある化学実験室にいる。
高成の居場所を教えるように迫り、それに対する閑雅の返答によって指定されたのだ。
「どうしてこんな所…」
あらかじめ閑雅が人払いをしていたのか、まだ夕方の4時だというのに第二校舎には人影がない。
人払いをしてまで伝えられる話とは重要な話、即ち高成の居場所ではないのかという期待に灰音の胸の鼓動は速くなる。
傾きかけた夕陽が窓から差し込んでまぶしいので、カーテンを閉めようと窓に近づいた。暗幕にもなる黒いカーテンは少し埃っぽく、灰音は分厚い布地を掴んだまま目を細めて夕陽を見た。高成は今どうしているのだろうか。夕陽を、外を見ることのできるような部屋にいるのか、それとも…。
そこへ、遠くの廊下からコツコツと足音が聞こえてきた。
「閑雅様だわ!」
足音はだんだんと明瞭になり、灰音のいる部屋の前で止まると静かにドアを開いた。ドアに背を向けて立っていた灰音がゆっくりと振り返ると、果たしてそこには閑雅の姿があった。
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