文
□わかってる
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「閑雅様!」
「閑雅様、コーヒーをいれますね」
「なんですか、閑雅様?」
わかってはいるのだ。
高成は、高成であり、閑雅でもある。
影武者になって10年。外では閑雅の名で呼ばれることにも、とっくの昔に慣れている。
それでも…
「閑雅様、どうかされましたか?顔色が…」
「灰音…っ」
「?」
喉元までこみ上げた言葉を飲み込む。
生徒会室にはまだ真栗やまおらも残っているのだ。
灰音は困った顔をしてクスリと笑い、
「会長室で待っててください」
と。
灰音は、わかっているのだ。
灰音にだけは、高成の名で呼んでほしいということを。