「待ってろ」 君がそう言って日本を発ってから、何年もの月日が経ちました。 私は君を、待ち続けています。 君と過ごした、高い、高い、マンションで、一人君を待ち続けています。 椅子に腰掛け、肩掛けを羽織り、本を手にとり静かに貢を繰々ります。 手にした本は、古い西洋のお伽話。 人魚の姫や、眠る姫、沢山の姫が居る中で、一際輝くラプンツェル。 高い、高い、塔の中、ただただ王子を待ち続け、静かに髪を結わいます。 私と彼女は似ているわ。 一人で"君"を待ち続け、一人で静かな一日を過ごす。 ラプンツェルにとっての"君"は、逢ったこともない王子。 私にとっての"君"は、一緒に過ごした愛しいひと。 過ごした時間に差はあれど、"君"への想いは同じです。 愛しい、愛しい、愛しい君。 ラプンツェルは、まだ見ぬ君を想います。 私は、離れた君を想います。 君と逢えるときを願います。 小さなカップに紅茶をそそぎ、小さな砂糖をぽちゃんと落とし、花びらのような溜息ひとつ。 嗚呼、君に逢いたいわ。 ラプンツェルの憂鬱 (〜091230) |