テニス駄文

□outside
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「あんた、本当にそのままでエエの?」

これで良いのだと、ずっと思ってきた。
これが最良だと、思うようにしてきた。

「自分も良ぅ大事に出来ん男に、他人を大切になんて、出来るハズないよ?」

そんな俺の思いを粉々にしたのは、姉貴の一言だった。




【 outside 】
−迷子・番外編−




それはあまりにも突然の出来事だった。

「それ、本当…?」

適当にやり過ごした授業を終えて帰宅するなり母親から聞かされた話に仁王は、驚きのあまり手にしていた鞄を床に落とした。

「お父さんの仕事の関係でね、急に九州に戻らなきゃならなくなったの」
「急にって…いつ?」

「来月。1ヶ月なんてあっという間なんだから、雅治も色々準備しておきなさいね」

急に、とは言えども限度がある。
母親がさらりという言葉に流石の仁王も面食らい、眉間に皺を寄せた。

「そんなイキナリ言われても…準備って…」

「色々あるでしょう?編入試験の準備とか、友達との挨拶とか、部屋の片付けとか…」

「そりゃそうかも知れんけど…」

「特にほら…、あの……、そうそう、柳生くん!あんた散々お世話になったんだから、ちゃんとお礼言っておきなさいよ?」

「柳生…?」

「そうよ。よく家にも泊まりに来てくれてたでしょう?」

「ああ…まぁ…」

「あんな風に雅治が家に友達を連れてきたのはあの子が初めてだったし、何よりもとっても礼儀正しい良い子だったじゃない?だから何だか特別なのよね」

「……」

悪気なくそういう母親の言葉に仁王は言葉を詰まらせた。

まさか、男同士で恋愛をして、あんな別れ方をして、もう数ヶ月も顔を合わせてなんて言える筈がない。

「エラい気に入りようじゃの…」

「そりゃそうよ。だって柳生くんと仲良くなってから、あんた変わったもの」

「俺が?」

「だってあの子が家に来るようになってから、あんたもちょっとは大人になったわよ」

「何、それ」

「何て言うのかな。他人に優しくなったと言うか…周りに意識が向かうようになったって言うか…」

それって、柳生くんの影響じゃないの?

笑顔でそういう母親に、仁王は、無言のまま自室に戻った。
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