テニス駄文
□GAME(282)
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頭が溶けてしまいそうな程、めちゃくちゃに抱き合いたい。
体の境目が無くなりそうな程、繋がりたい。
そんな時、俺は女を抱く。
裏切りだなんて、思わない。
今まさに俺の上で腰を振る女の事なんか、これっぽっちも愛しちゃいないのだから。
【 GAME 】
始発電車に揺られて向かう先は、柳生の部屋。
シャワーを浴びたての、ボディシャンプーの香りをわざと漂わせて、合い鍵を使って部屋に上がり込むと俺は、そうする事が当然のように柳生のベッドに潜り込んだ。
「…随分と遅いお帰りですね」
「そうか?」
「そうですよ。非常識にも程があります」
俺とは違い寝覚めの良い柳生は、俺気配に気付くやすぐに嫌みを口にして、俺の髪に指を通すと、その隙間から通り抜けたいつもと違うシャンプーの香りに、ふと目を細めた。
こんな事は今日が初めてではないから、もう気付いているのだろう。
俺がどこで、何をしてきたのかを。
そして、何故そんな下らない事をわざわざしたのかも。
「…仕方のない人ですね」
「何の事?」
溜息混じりに柳生は、横になったまま俺のシャツのボタンを外しにかかる。
俺は、目の前にある彼の薄い唇をぺろりと舐め上げてされるがままに上体を晒した。
全てのボタンを外し終えると彼は、跨る様にして俺の体を押さえ込み、一切逸らされることの無かった視線をゆっくりとずらし、体に残された朱い跡を確認するようにじっくりと、視線で嘗め回す。
その冷ややかな視線にうっとりとする俺にそっと口付けてから柳生は、再び俺の髪に頭を撫でる様に優しく触れて、そのまま力を込めて下方に引いた。
「いった……っ!!」
「……」
普段は紳士と呼ばれる彼からは想像も出来ない荒々しい行動。
猫っ毛の俺の髪がブチブチと音を立てて千切れてしまいそうな程、容赦ない力で引っ張られて、思わず声を上げた。
「前にも言いましたよね?こう言った子供染みた真似はやめなさいって」
「…別にエエじゃろ…」
「……」
「俺も男じゃ。たまにはお前ばっかやのうて女ン中に出すモン出したなるわ」
「…たまには?この前はいつでしたか?つい最近でしたよね?」
「…っ…!」
「―…汚らわしい」
鎖骨下の印に爪を立てられ俺は、喉を鳴らす。
じりじりと皮膚にめり込むその感触は痛いなんてものじゃない。
けれど、その痛みさえも俺の脳内では快感へと摩り替わる。
「ほな、柳生が消して?」
「私が?」
「そうじゃ。こん上から、お前が跡つけて」
「…」
今この俺の身体に残る汚れが分らなくなる位にこの身体中に、所有の証を刻んで欲しい。
そして俺も、柳生の身体を同じように吸い上げて、噛み付きたい。
そんな思いを乗せて、縋るように首筋に腕を回して口付けると彼は、くすりと笑った。