テニス駄文

□Fragile
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そもそも、互いに女がいるのに、何故俺たちはこんなことをしているのか。
…それは、正直なところ、俺自身にもわからない。

ダブルス組んで、入れ替わって。
そんな事を繰り返していく内に、こうなってしまった。

常に周りに平等に優しく真面目が服着て歩いているような柳生と、何もかもが自分中心で好き勝手している俺。
あまりにも正反対の性格だから興味をそそった。
それが一番のきっかけに思う。

気がつけば、互いに、互いの視線を感じ合い、目が離せなくなり、いつしか一つになりたいと思うようになった。
まるで、失ったパズルのピースを求めるかのような…そんな、無くてはならないものになってしまっていた。

変な話かもしれないが、俺たちは男同士にも関わらず、身体の相性が良い。
男同士のセックスなんて最初はヤり方すら知らなかったし、醜いモンだと思っていた。

ところが、それは大きな間違いだった。

こんなことを言ったら“ふざけないで下さい!”なんてあいつに言われるかもしれないが、柳生は、抱けば抱くほど綺麗になる。
愛しくて、たまらなくなる。
…あいつの女に嫉妬という感情を抱くほどに。


「では仁王くん。私たちは今日はここで失礼いたします」

「おぅ」

「仁王くんも部活お疲れ様。また明日ね!」

「おぅ」

今日の柳生は、彼女と一緒にご帰宅らしい。
なんでも図書館に寄って勉強してから帰るとかなんとか。
スレンダーでなかなかの美人。二人並んで歩く姿はまさに美男美女。
お似合いと言うより他にない。

以前は全くなんとも感じていなかったのに、最近の俺は、どうもおかしい。
あの子にはそんなつもりは全く無いのだろうが、こうして柳生と二人でいるところを見かけるたびに、私が本命なのよ、なんて、言われているような気がする。
男の貴方じゃこの人と結ばれるなんて無理なのよ…って。

こんな時、女と遊びなれていて良かったと心から思う。
心底に醜い感情を抱いていても、表面上は女好きする笑顔を浮かべていられるから。
だから柳生の女にだって愛想を振りまくのは容易く、柳生も彼女も俺に対して不信感など微塵も感じていないようだ。

女なんて、所詮は男の外見重視だから、こちらが笑顔さえ浮かべていればそこそこ良い印象を抱く生き物なのだ。

「さて…帰るかの…」

俺はケータイを取り出し、すばやくメールを打ちながら、誰に言うでもなくそう呟いた。

あて先は、柳生の携帯。
内容は今晩あいつが、カノジョと別れてからメールチェックする事を計算に入れて打ったつもりだ。

きっと、焦って電話をかけてくるに違いない。

…今からアイツの反応が楽しみで仕方のない俺は、人知れず小さく笑みをこぼした。



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