テニス駄文
□GAME(282)
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「冗談じゃありませんよ。どこの馬の骨とも分らない女性が付けたキスマークに口付けるなんて気持ちの悪い事、出来るわけないでしょう」
「アカンの?」
「ええ。甘えるのも大概にしてください」
「どうしても?」
「ダメです。第一私、そんなに優しくはありませんよ」
こと、あなたに関してはね。
俺の背筋が震えるほど綺麗な笑顔でそう言うと柳生は、シャツに引き続き俺の腰に手を移動させると器用に片手でベルトを外して俺の気に入りのデニムの前を寛げた。
今から与えられられるであろう快感を思うだけで腰が疼く。
いつもは俺に抱かれる側の柳生だが、実は相当ウマい。
ストイックなふりをして、本当は普段からそんな事ばかり考えているのではないかと思うくらい、カンタンに俺のカラダを支配してくれるのだ。
その上独占欲が強くて、少しサディスティックだったりするからたまらない。
だから俺は、たまに無性に抱かれたくなるのだ。
いつもは俺を求めて切なげな声を漏らす柳生が、俺を本気で欲し、貪る姿を見たいから。
「……」
柳生の大きな手が、俺のデニムを下着ごとするりと抜き取り、何一つ着崩さない彼とは正反対に俺は彼の眼下に全身を晒した。
まさに、一糸纏わぬ姿というやつだ。
「後悔させてあげましょうか」
「後悔?」
「ええ。私以外の誰かに見せる事の出来ないような姿にでもして差し上げましょう」
「どうやって?」
「聞かなくてもわかっているでしょう?普段あなたが私にしている事ですよ」
キレイな指が俺の首筋から胸を通り、腹部へと到達する。
「…全然身に覚えがないんじゃけど?」
「そうですか。では…」
「?」
「私の好きにさせて頂きます」
とぼける俺の唇に噛み付くと柳生は、俺の腕にかろうじて引っかかったままのシャツをそのまま利用して、俺の手首を背後で一纏めに縛った。
細長く節が少し目立つキレイな柳生の指が、薄い手の平が、俺の肌の上を流れていく。
どこをどうされれば気持ち良いのか。
俺が柳生を知るように彼もまた俺以上に俺の性感帯を熟知している。
なのに…。
「柳生…」
「はい?」
「なんで避けとるん?」
「…何の事でしょう?仰る意味がよく分かりませんが」
明らかに俺のイイ所全てを避ける愛撫にじれったさからカラダを震わせる俺の胸元に唇を落として柳生は俺の質問をさらりと交わす。
「わかっとるくせに」
「だから分からないと言ったではありませんか」
「……っ!」
「言いたい事があるのなら、自分の口ではっきり言いなさい。…先程まで遊んでいた女性にそうさせたように」
「ァあ…ッ」
蔑むような目で見下ろしながら薄く笑うと柳生は、俺の左脚を肩に抱え上げて太股の付け根を痛い程吸い上げ、そのまま引きちぎられそうな程の力で噛みついた。
「なん…ッ…やぎゅ…っ痛ッ!」
「…これぐらいで暴れないでくださいよ」
「違…っ…そこじゃな、い…!」
あまりの痛みに生理的な涙が目尻に浮かべた俺を見ても顔色一つ変えずに柳生は唇を離すと息を乱す俺の脚をベッドに戻して放置した。