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□世界を歩く私と貴方
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世界を歩く私とあなた


遠く遠く
遥か彼方……
”どこまでいくの?”
彼は私の手を引きながらただ一言。
「地の果てまで。」
”無理よ。果てなんて無いわ。だって地球は丸いんですもの。”
彼はやれやれと首を振った。
「ロマンがないなぁ君は。丸いから探しているんじゃあないか。」
”だから、丸い限り果ては無いんじゃないの?”
彼は不敵な笑みを浮かべた。
「馬鹿だな君は、無いから今こうして探しているんじゃないか。」
”…意味がわからないわ。”
「つまりだね、この星は丸い。丸いが故に果てが無い。でもそれではつまらないのだよ。だから探しているんだ。僕が、僕と君が認める、地の果てに相応しい土地を。そして僕らはそこで暮らすんだ。どうだい、素敵だろう。」
”…本当に行けるの?”
彼は首を縦に頷いた。
「行ってみせるよ。」
どうしてそんな風に言えるのか、不思議だわ。
”もし私が行けなかったら貴方はどうするの?”
すると、彼は怒った様に私に振り向いた。
「連れて行く。背負ってでも。」
私は笑った。
彼は怒りながら、照れてそっぽを向きずんずん歩き出した。
私は引っ張られながらも頑張って歩調を合わせた。
「…行かないなんて、言わせないんだからな。」
彼は向かい風の中呟いた。
私はなんだかうれしくなって、もう一度その言葉が聞きたくなった。
”え?何?”
彼は顔を真っ赤にした。
「聞き返したってことは、聞いてただろ。」
”うん。聞いてた。”

彼の足どりがまた速くなる。

−それが私達の人生で、私達に与えられた道。


この道を歩くの。

貴方とふたりで。

−ひとりでいいって言っても、そんなの貴方が許さないでしょう?

それに、


私もきっと許さない。

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