書棚
□飼い猫
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鐘が鳴り響く。
あのこはもういない。
桃色の花嫁衣装、
死に装束を纏って、
僕に最後の別れのキスをして
あのこは駆けていった。
あのこが付けてくれた宝石の首輪、
ふかふかの寝床にねこじゃらし、
もう勝手に飴をなめても
ケーキを食べても
壁で爪を研いでも怒られない。
あのこは旅立った
幸せになるために
僕をおいて、
でも、それでもいいよ。
あのこが幸せになれるなら、
幸せじゃなくても
あのこが自由な
僕ら猫のように
何にもとらわれずに
あの、
あたたかい日向にいれるのなら。