関西娘

□転校先
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「ここが、氷帝学園……」



氷帝学園校門前

私服姿の女の子が一人佇んでいた
校舎の圧倒的な大きさに青い瞳をこれでもかというほど見開き、そよ風によってポニーテールに結んだ茶色の髪が揺れる



「予想以上にデカすぎやろ」



彼女の名前は忍足怜那
口から発せられた言葉は少し訛りがあって、関西育ちだということが分かる
そんな怜那は氷帝学園の生徒ではない
詳しく言えば"まだ"だ

明日からここに通うことになっているのだ


では何故一日早くここに来たのか
日にちを間違えたわけではない

ヒントを言うならば怜那の鞄の中にはある人のお弁当が入っている



「テニスコートに行けばいいんやっけ?」



今だに建物をジロジロと見ながら迷わず敷地内へ足を踏み込んだ

見れば見るほどこの学校の凄さが分かる
チラリと見えた中庭らしきものには噴水があり、何故か駐車場までもが馬鹿みたいにデカい

一昨年から学校の支援者が現れてより大きくなったという噂を聞いたことがあった
しかしここまでとは誰も思うまい
その支援者というのは金銭感覚が狂った金持ち貴族なんだろうと自己解釈をする

そんな学校に何故怜那が転校するのかといえば一般的な理由だ
両親の仕事の関係で引っ越すことになった
そしてこのマンモスを校選んだのはただ従兄弟の侑士がいたから
この二つの理由からたまたま氷帝学園がヒットしたのだ


さて、何故怜那が今ここにいるのか分かっただろうか

引っ越す以前から怜那の両親は仕事場に住み込みで働いていることが多く家に帰ってこないときが多々あった
だからもう一人の従兄弟である謙也の家によくお邪魔していた
居候していると言っても嘘ではならないほどに
今回もそうなることを怜那は予想し、謙也がいる大阪に留まると提案したのだが両親は断固として反対した

そして結局現在進行形で侑士の家に世話になっている
今日も起きて最初に見たのは自分の部屋よりも見慣れた真っ白な天井だった
ノソノソとリビングへと移動すれば困った顔をした侑士の母、つまりは怜那の叔母がいた
叔母の視線の先にはぽつんと置かれたお弁当
侑士が忘れて行ってしまったのだ
それを知った怜那は居候の身として行かなければならないと思い、叔母に自分から届けるように言ったのだ




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