関西娘

□注目の的
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窓越しに聞こえてくる鳥の囀(さえず)り
カーテンの隙間から入り込む日差し
けたたましく鳴り響く目覚まし時計
しかしベッドで寝ている怜那はスヤスヤと気持ち良さそうで起きる気配はない

そんな怜那の側へ忍び足で近づく人物がいた
隣の部屋を使っている侑士だ
侑士は朝の身支度を済ませているようで既に氷帝の制服を身に纏っている



「怜那、はよ起き」



朝に弱い怜那のために起こしにきたようだ
今だに鳴っている目覚ましを止め、まずは怜那を優しく揺さぶる



「……あと五時間」

「いや長過ぎやん!」



怜那のまさかの発言に反射的にツッコミを入れてみるも起きる気配はない
布団を顔の半分まで被っている怜那をチラリと見てため息をつく

こうなったら自業自得というやつだ



「……ホンマ起きな知らんで」



より一層低いため息まじりの侑士の声
何故かつけていたネクタイを緩め、片足をベッドに乗せ怜那の顔の横に両手をつく

二人の体重がかかりシングルベッドがギシリと悲鳴を上げる



「なんか……おも、いいいい?!」

「あ、なんや起きたん?」



その音とベッドの揺れでようやくうっすらと目を開けた怜那は今の状況により目を見開く

侑士が自分の身体の上に何故か馬乗り状態
しかし侑士はさも当然のように残念そうにしている


寝ぼけた頭で瞬時に理解する怜那は身体をわなわなと震わせる



「重いってゆうか……早よ退かんかい!」

「ぐはっ!!」



振り上げた足は見事鳩尾にヒットした











「……いただきます」

「いただきます!」



低血圧な怜那とは違いやけにテンションの高い侑士
学校では見せることのない緩みきった表情に怜那は冷たい眼差しを向ける

そしてふと気づいた違和感
以前の学校でテニス部マネをしていた怜那はこの時間どれだけ辛くても家を出て朝練に参加していた
テニス部員である侑士が何故まだここにいるのか



「侑兄、部活は?」

「今日はないで」

「ふーん」



まあ、毎日朝練があるわけでもないしそんなものか、と怜那は自己完結させた
素っ気ない怜那とは打って変わって侑士は未だに頬を緩ませたまま



「だから今日は怜那と一緒に学校行けんで!」

「………それやったら、職員室まで案内してもらってもいい?」



一瞬にがい表情を見せた怜那だったが、すぐに戻った

なにデレデレしてんねん気持ち悪い…… いや、あそこメッチャ広かったから侑士に案内してもらったらええやん
そうやん、そうしよう

この短時間で自分にとって一番都合のいいやり方を見出したのだ


「なんやそんなに俺と一緒にいたいんか!俺めっちゃ愛されとるなぁ!」



怜那がそんな考えをもっているなんて侑士は全く気づかず、自分のいいように解釈したようだ
わざわざこの勘違いを正してあげようなんて思うものはおらず、怜那はそのまま話を進めた



「そやね」



侑士の頬はますます緩んでいった




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