関西娘

□マネージャー
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跡部に着いて行けば見えてくるのは校舎から少し離れた白い建物とテニスコート
おそらく白い建物はテニス部の部室なのだろう
跡部財閥を筆頭に、多くの企業から規定よりも多くの資金を得ている氷帝だからこそ、部室もこんなに立派なのだろう
怜那は前にいた学校との大きな違いを見せつけられ、ぼんやりと眺めていた

そんな怜那とは違い、跡部と紫苑にとっては見慣れた景色であり、なんの変化もみせない
跡部が部室のドアを開け、入って行くのを紫苑もついて行く

外に居るのが自分だけだと気付いた怜那も慌てて部室へと入る



「うわぁ、中も立派なもんやな……」



怜那が口にするのも仕方がない
普通の学校ではお目にかかれない、シャワールームやマネージャーが使用するのであろう洗濯機や冷蔵庫の置かれた一室がちらりと視界に入る

しかしこんなにもお金がかかるものが、部活数あるとは思えない
どれだけお金持ちだとしても部活以外にもお金はかかるものだ、限度というものがある


おそらく、と怜那は跡部を見た

跡部財閥がこの学園でもっとも資金を援助しているだろう
となれば、跡部の所属しているテニス部が贔屓されるのも納得がいく
ただ、それだけが理由では無い
氷帝テニス部の名はここ最近有名である
実績もあり資金もある

テニス部が他よりも優遇されているのはそれだけ学園に貢献しているからなのだろう



「ほんまに怜那連れてきたんかいな……」

「そう言っただろうが」



部室の中には、跡部と侑士がいた
しかし怜那が知っている侑士とは違いなんだか大人しい
この顔が、ここでの忍足侑士なのだろうか



「それで、私たちを連れてきた理由はなんなのかしら?
 忍足侑士の従妹である怜那だけならまだしも、なんの関係もない私まで呼ばれるなんてね」

「関係ならある、分かっているだろう?」



試すように跡部をみる紫苑
その表情は怜那のデータを取っていたときよりも真剣で
跡部もそれに対抗するような眼差し

侑士もなんとなくわかっているようだ


しかし



「……えーっと」



怜那だけは違った
転校してきて1日目、氷帝テニス部と紫苑の関係なんてものは全く分かるはずがない
紫苑が挑発するような態度で跡部に接したことだってびっくりだ

1人、この雰囲気に弾き出された様



「単刀直入に言う、お前達にマネージャーをしてもらいたい」



そんなことおかまいなしに跡部は言い放つ
ついていけない雰囲気の中、怜那はまたも頭にハテナを浮かべる


マネージャーを、怜那と、紫苑に、



「ちょちょちょ、ちょっと待ってや!
 なんでそんな話になってんのか知らんけど、うちは断る!」



疑問が頭の中を覆い尽くしたまま、怜那はすかさず頭を横にふる

昼に紫苑とマネージャーについて話したときにはすでに怜那の意志は決まっていた
いまさらマネージャーをするつもりはない
どんな理由があって跡部が勧誘しているのか分からないが、頼まれても「はいやります」なんて軽々しく言えるはずがない



「やっぱ跡部、俺も反対やわ
 怜那になんかあったらどうするんや」



どうやら侑士は二人(正しくは怜那だけだが)をマネージャーにすることに反対のようだ
渋った顔に、怒りの炎が見え隠れする瞳



「そのときは坊主でもなんでもしてやる
まあ、そんなことは起きないだろうがな」




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