Baby Birds-小さな鳥-

□みにくいあひるの子
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九頭龍高校体育館にて
ステージ上の人から見えない死角になっているところに、ある女子生徒が寝ていた

彼女――花園零夏は金髪で、いかにも不良のような生徒
しかし今年入学した新入生、つまり1年である
入学式に出たときはそれなりに人目を引いたが、なんてことはない
他にもちらほら零夏のような生徒がいて、零夏は予想通りの不良が多そうな学校だと思った

そして初授業の日
これだけ不良学校ならちょっとぐらいサボっても支障はないだろうと踏んで、定番の屋上ではなく、初日授業では必ずと言っていいほど使わない体育館に忍び込み、こうして昼寝をしているのだ


しかし、さきほどから零夏の寝息以外の音がする
ボールをつく音とシューズと床が擦れる音

体育の授業ではない
その音は一つしかない
そう、零夏以外にもサボりがいたのだ

けれど、零夏は起きない
たとえボールを弄っている彼がシュートを入れてガシャンと音がしても起きない

たとえ彼が誰かと揉めていたとしても起きない






ああぁぁぁああぁぁああああぁぁぁ

鈍い音と同時に誰かの絶叫が木霊する
零夏は微かに反応して、少し身をよじらせた後やっと目を開けた



「いい夢見てたのに誰だ、よ……て、なんで兄ちゃん達がいるの」



むくりと起き上がった零夏が起こされた元凶を見やると目を見開いた
なぜなら自分と血が繋がっているあの双子兄弟がいるのだから
向こうは死角になっていて零夏に気づいていないようで、何やら揉めているように見える

しかも随分と時間が経っていたようで、部活をしにきたのであろう女の子達がいた
服装からしてバスケ部だろうか



「てか、部活ってことはもうお昼かー」



お腹空いたなー

兄達が喧嘩をしているにも関わらず焦りもしない、止めもしない
ただのんびりと立ち上がり、出そうになる欠伸を必死に噛み殺す



「だって一緒にバスケやろうって―――」



よくみたら兄弟喧嘩ではなく、誰かと揉めているらしい
バスケ、か、と零夏は納得した
身長が遠くからでも分かるほど低い男の子が長男である千秋に訴えた
しかし、彼の言葉を肯定する人なんていないのを零夏は知っている



「俺たちはバスケ部だけど、バスケなんてやりたくないんだよ」

「なんでですかっっ!?」



なんで、なんてこっちが聞きたい
妹として余りにも言いづらいことを簡単に言ってしまう彼に零夏は羨ましくも妬ましくも思った

その感情を掻き消すようにステージから飛び降りた




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