BLEACH

□正反対な彼
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私は初めて恋と言うものが何なのか知った
好きな彼のことを思うだけで胸が熱くなる

でもそんな彼は私とは正反対な人


器用な彼
優秀な彼
落ち着いている彼


それでも私は遠くから見ているだけで心が癒されてるの





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今日はバレンタインデー
女の子には欠かせない一日

私とは無縁のイベントだと思っていた
だけど好きな人が出来て、いつも相談に乗ってもらっている友達の一人であるたつきに後押しされ、勢いでチョコを買ってしまった

ほんとにどうしよう
私の心には不安がいっぱい

でも買ってしまったからには頑張らなくては!






とは意気込んだもののあっという間に放課後になってしまった
私が買ったチョコは渡されることはなく、私の机横のフックにかかった紙袋に入ったまま

やっぱり渡せなくて無駄になってしまったチョコに、ごめんねと心の中で謝る

渡そうにも顔を見るだけで緊張して、声もかけられなくて呼び出せなかった
やっぱり私には遠くで見ているだけのほうが合っている



「もう帰ろ……」



放課後なら、と人がいなくなるまで教室に入り浸っていたが、当の本人はさっさと帰ってしまったようで待っていたのすら無駄だった

確実に学校に残っていないだろう、と踏んで席を立ったその時、思いもよらないガラッというドアが開く音がした



「えっ?」



まさか教室に戻ってくる人がいると思わなくて、小さく呟くような声を漏らす

音の方へ顔を向けると出入口に佇んでいる眼鏡の男子生徒


私が思いを寄せている私と正反対の彼

石田雨竜君



「あれ?ナマエさん、まだ残っていたのかい?」

「は、はい!えっと……石田君は、忘れ物?」



いきなり声をかけられてしまって少し声が裏返ってしまった
ドクドクと心臓が煩くて、石田君に聞こえないようにと服の胸元をギュッと握る



「あぁ、宿題のプリントをね」

「そうなんだ、私はもう帰るから、じゃあね」

「また明日」



やりたいこととやっていることが180度違う

そうじゃないの!私は今持った紙袋の中にあるチョコを渡したいの!
なのに緊張と恥ずかしさから行動に移せない


このまま帰ってしまっていいの?
――よくないよ

恥ずかしいの?
――今は私たちしかいない


今が、チャンスなんだ


こんなチャンスは二度と来ない
もう一人の相談相手の織姫に言われた言葉を思い出す

チャンスは一度だけ
なら私はそのチャンスに賭ける!



「あ、あの!石田君!」

「何だい?」

「これ!」



私は勢いに任せて昨夜悪戦苦闘してラッピングしたチョコを渡す
石田君をまともに見ることはできなくて、お辞儀の状態を保つ
しかし、石田君は喋らず、自分の手にあるチョコの重みもなくなることはない



「………」

「あ、の、その」



やっぱり迷惑だったのだろうか
怖くなってそろりと顔を上げて石田君の様子を窺う



「これは、本命?」

「っ!……は、い」



光が反射した眼鏡越しに石田君と目が合って、自分でも分かるぐらい顔がカッとなった
あついよ、二月なのに

これで思いは伝えられた
なにも悔いはない

泣く準備も出来てるんだからと内心開き直りつつあった



「ありがとう」

「だよね、でも……て、えっ!?」



さっきまで手の中にあったチョコの重みは消えた
石田君にスルリと持っていかれたのだ

馬鹿な私は期待してしまう
早まる鼓動は収まらない



「これは、私の良いように解釈していいの?」

「そのつもりで受け取ったんだ
 その、これだけは先に言わせて……僕は、ナマエさんが好きだ」



ああ、これは夢ではないか
そんなことを思ったが、私の頬を伝う暖かいものが現実に引き戻してくれた



「私も、石田君のことが…好き……です」



涙で滲む視界
泣きじゃくった私の顔を見られたくないけど、隠す必要はない

石田君の腕が私を包み込んでくれて、ああ、嬉しいな、なんて思ってまた泣いて
私が泣き止まないことに焦り始めた石田君はやっぱり優しいな、なんて幸せ過ぎて笑みが零れる
そしたら石田君も笑ってくれて、ああ、石田君のこんな優しい笑みは初めて見たかもしれない





加筆修正2017.09.25
 

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