関西娘

□マネージャー
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「ほんま、ちょっと待って……
いきなりマネージャーやれ言われてもそんな簡単に入るなんて無理や」



しかし怜那は揺るがない
テニス部のオーラに圧されながらも自分の考えは変わらない



「なぜだ、怜那なら経験も豊富
誰も拒まない」

「……私らにこだわらんでも他にやりたい人ぎょーさんおるやろ?
ていうかマネージャーおらんことに驚いたわ」



純粋な疑問
多くのファンを持ったテニス部ならばマネージャーの1人や2人すぐに見つかるだろう
にもかかわらず、怜那が転校してくる今日まで1人もいないなんてことの方がおかしい
何故自分たちにこだわるのか

その答えを教えてくれたのは意外にも紫苑だった



「マネージャーなら数ヶ月前までいたわ」

「え?」

「だけど辞めたわ……いや、辞めるしかなかった、の方が正しいかしら」

「おい、何言うつもりや」

「ありのままのことを言うだけよ
あんな出来事隠し通せって方が無茶なのよ」



紫苑の発言に皆心当たりがあるようで、分かっていないのは怜那1人
侑士は何故か怖い顔をして、何かを話そうとする紫苑を睨みつけている
それを制すのは跡部
柳にまかせよう、と



「辞めるしかなかったってどういうこと?」

「怜那もファンクラブがあるのは知っているでしょう?
男女共に多くのファンがいるわ
その中にも派閥があってね、大きく分けるなら穏健派と過激派
穏健派は部員もそれを支えるマネージャーも陰で見守り、そして支えるそんな考えを持った人たち
一方の過激派は部員を支えるのは自分たちであってマネージャーではないと考える人たち
最初こそ過激派なんてごく少数だったわ
けどね、テニス部は人気すぎたのよ
部員を支えるだけじゃない、もっと近づきたいと思う人たちが増えた
例えるなら人気アイドルグループってところかしら
そして過激派の人数も増えて事件は起こった

……マネージャーの飛び降り自殺」


「……自殺?」



怜那は耳を疑った
侑士を含めたテニス部員の強張った顔から事実であることは明白だ
そのことがさらに重苦しい空気を作り出していた

四天宝寺にいた頃とは全く違うテニス部事情に怜那は頭が痛くなる



「過激派がマネージャーに陰湿ないじめをしていたの
幸い自殺は未遂で済んだけれど、マネージャーは転校
いじめをしていた人たちは退学処分」

「なんやのそれ……おかしいやろ」



怜那には理解し難い出来事だった
そもそもファンクラブがあること事態ついていくのがやっとなのに、部員を応援しているはずのファンクラブが部員を支えているマネージャーを自殺に追い込むなんてどうかしている

昨日の西園寺と侑士の不自然なやりとりはこのことが原因か



「だが俺たち部員にはマネージャーは必要不可欠だ
今は一年に仕事を任せているがそれでは一年の練習量が減ってしまうからな
だからこそ、テニス経験があり、忍足の身内でもある怜那が適任だ
情報屋は怜那のサポートと他校の情報収集等をメインに頼みたい」

「あら、私は誰の身内でもないけれどいいのかしら」

「ハッ、立海の柳の妹ってことはだいたいの奴らが知ってるだろ」



どうだ、という跡部と怜那の視線が交わる
跡部の真剣な瞳に負けた怜那は目をそらしため息をつく



「そんな真剣に頼まれたら断るものも断れへんわ!」

「なら私も入部するわ」



怜那と紫苑の答えに部屋の空気が軽くなる



「それじゃあよろしく!」




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