Baby Birds-小さな鳥-

□花園くんちの三男
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「あぁ!?もっぺん言ってみろや!!」




九頭龍高校―通称クズ高―の体育館裏で何やら揉めているようだ

壁に背を付けて逃げ場のない金髪のいかにも不良な男の子の周りにはこれまたいかにも不良な面々
その形(ナリ)と人数だけでも怖いというのに、金属バットなどの武器を持っているものもいる

もし、少年漫画のように正義のヒーローがいるならこの不良たちを一掃してくれるのだろうが現実はそう甘くはない

しかもこの体育館裏は人気がない
近くにポツンと小さく建っているプレハブの窓ガラスはガムテープで補強されている
さらには点々と煙草の吸い殻が落ちている
治安がよろしくないこの学校の所謂たまり場と化しているのだ

だからこの高校生活を有意義に過ごしたいものはここに近づかない


そんな助けがくるはずのないこの状況でも不良の怒りの矛先にいる男の子は涼しげな顔

そんな余裕な表情を見せたのが気に食わなかった不良のリーダーらしきものは男の子の胸倉を掴む




『お前の耳は飾りかよ
 てめぇーらは眼中にねーから失せろっつてんだろが、バーカ』

「っんのガキャ!!」




なんともべたな煽り方だ

男の子は煽りたくて煽っているのか知らないが、肝が据わっているにもほどがある
抑えていた怒りが遂に溢れだしキレてしまった不良は腕を振り上げる

それでも男の子は冷静だった




『あんたらが俺より弱いってのがなんでわっかんないかなー』




男の子の動きは一瞬で瞬きをしていたら見逃すほど
その男の子は不良が振り下ろした腕を掴むとそのまま足払いをして投げ飛ばしたのだ
不良は重力のまま地面にぶつかる

これだけで力の差は歴然
だが相手は不良
負けを認めるほどプライドは低くない

リーダーの敵とでも言うように残りのやつらが一斉に迫ってきた




『だから、最強(恐)の双子に勝てないお前らじゃ俺をやるのも無理だって』
















『やっべ、制服汚した』




制服についた汚れをはらう男の子は無傷
さきほどの余裕の表情がそこにある

男の子の周りには金属バットや鉄パイプが転がっているだけ
不良たちが男の子を襲ったが力の差は歴然
最初に怖じけづいた一人を皮切りに全員逃げていったのだ




『ったく、見てたんなら助けろよな』




不良たちは逃げていった
だが、今の時代には珍しい金髪リーゼントとアフロのいかにも不良な二人がいた

このクズ高で最も強いであろう花園兄弟、しかも双子
普通の人ならそんな二人を見て逃げるだろう
だが男の子は違う




「喧嘩はやめたんだよ」

「お前ならそのぐらい一人で大丈夫だろう?」


『トーゼン』





男の子の名前は花園零夏

目の前の双子の弟だ




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