Baby Birds-小さな鳥-
□みにくいあひるの子
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「あー、と……そのへんにしときな、よ?」
予想以上に着地の音が響いて注目を集めてしまったことに後悔しながら言いづらそうに言う零夏
「誰だ?」
「あっ!」
「ヤスの知り合いか?」
「知り合いもなにも……」
いきなりの零夏の登場に髭が特徴的な男子生徒――鍋島、通称ナベが首を傾げた
その隣で小さく声を上げたリーゼント頭の男子生徒――安原、通称ヤスは見覚えがあるようで、そのことをこれまた眼鏡の男子生徒――茶木、通称チャッキーが尋ねた
零夏はそんな三人の中の一人、ヤスに久しぶりと小さく手を振った
零夏とヤスは初対面でない
零夏の兄達の繋がりで一年前ぐらいから護身術として空手を教えてもらっている
そんな繋がりをもたらした兄達はといえば
「零夏!お前探したぞ!」
「え?……ごめん?」
零夏を探していたらしい
特に次男である百春は「お前はオカンか!」とツッコミたくなるほど叱ってきた
しかし零夏は探される理由がわからなくて首を傾げてわからないまま謝るだけ
「ところでそこの小学生君、名前は?」
「車谷空……高1です」
「え!タメ!?」
マジで小学生だと思ってた、と小さく呟く零夏
その言葉が聞こえたらしく、空は顔をこれでもかというほど歪ませた
ごめんごめんジョーダンだよジョーダン、なんて笑いながらごまかしている零夏だが冗談じゃないのはバレバレだ
「とりあえず車谷君、この学校でバスケなんてできないし諦めなよ」
「そう言うことだ
たとえ“翼”があっても空がなければ鳥は飛べん」
「わかりました、バスケットはあきらめます」
笑っていたのが嘘のように真剣な顔で言う零夏と千秋
しかしあっさりと空が諦めたことは予想外だった
何か執着心があったようにも見えたが諦めてくれるならそれでいい、と安心して息を吐いた零夏だった、が
「ただし僕が負けたらの話ですが、バスケで勝負しましょう……5対1で」
「なっ!」
空の言葉に驚きを隠せない
お世辞にもバスケに向かない体格の空が初心者らしい三人を含めても経験者が二人いるこの不良5人組と勝負なんて、と
そんなのゴールが入る前に阻止されるに決まってる
下手したらファウルだけじゃ済まないようなことだってされるかもしれないのに
「5人がかりで負けるのが恥ずかしいってゆーなら、別にやめてもかまいませんけど?」
どこか自信満々な空に目が離せない零夏
口角が上がるのを抑えられない
面白い子を見つけた
この子なら兄を――
「面白い……百兄、その試合やったら?」
揉め事に関係ないはずの零夏だが、口だしせずにはいられなかった
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