Baby Birds-小さな鳥-

□才能のない少年達
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昼休み、授業が終わってすぐ零夏は行動した
まずは1年2組へ行く



「車谷?そんなやついないよ?」

「そっか、ありがと」



ドア付近にいた生徒に尋ねてみたがどうやらいないらしい
覚えてないだけじゃ、とも思ったが考えを改める
車谷という珍しい苗字に男子というわりには低身長な見た目であの無邪気さ、大半の人の記憶にこびりつくことだろう

となれば、2組とは逆の教室か

零夏は踵を返し、自身のクラスである3組を素通りし、足を止めた
奈緒の言っている人が空であれば、この4組にいるだろう

ぴっちりと閉まっているドアに手をかける



「わあ、」

「……っ…!」



ドアに力を入れる瞬間、ガラッと開く
しかし開けたのは零夏ではない
誰かが反対側から開けたのだ
そのお陰で零夏の込めた力は霧散する



「あれ、零夏さん?!」

「やっほー昨日ぶり、ちょうど探してたんだよ」



なんと反対側にいたのは零夏が探していた空だった
購買へ向かおうとしているのか、手には財布がある
すれ違いにならなくて良かった



「探してたって……あ!マネージャーやる気になってくれた?」

「いや、それはまだ保留
 ただ空と一対一で話してみたくて」



キラキラとした目で見られるが空の期待には生憎答えられない
断る理由はない、が、すんなり受け入れるのかと聞かれればノーだ
結局は勇気がないのだ
ただ1つ返事をすればいいのに零夏は躊躇ってしまう



「あ、購買行くの?
 引き止めるのも悪いし、ついて行っていい?」



迷っている自分を知られたくない零夏は咄嗟に話を変える
零夏も昼は購買で済まそうと思っていたから丁度いい

空は話が変わったことを気にせず了承した



「それじゃあ行こうか、兄さんたち曰くすぐなくなるらしいから」

「ほんと!?じゃあ早く行かなきゃ!」

「廊下は走ったらダメなんだよー
 生徒指導に見つかったらぐちぐち言われるし」



二人は目的の購買へと向かう
零夏が兄から聞いた(主に千秋だが)クズ高の豆知識
その1つである購買情報を空に言えば、空は走り出す
それを見て零夏は咎める気もない声で注意する

自分の声がいつもより明るいことを零夏は気付いていない




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