今ここから…

□前触れ
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「おーい!智佳ちゃんこっちだよー!」

「ごめん皆!待たせちゃった?」

「一護が来てないし浦原さんが気にすることないよ」


翌週の水曜日7時30分
指定の場所へつくと黒崎一護以外のメンバーは既に到着していた
有沢竜貴の言葉に井上織姫が一護が本当に来るのか不安そうにする
が、そんな心配もやはり杞憂だったようで、私がきた道とは別の道から髭の濃い男性とジン太や雨ぐらいの背格好の少女を二人連れてやってきた
一護の父と双子の妹だ

学校では最後まで来たくなさそうにしていた一護は案の定仲のいい浅野と小島にからかわれている


「浦原さんがこういう類に興味あるなんてちょっと意外だわ」


彼らを遠目に見ているといつも井上と一緒にいる有沢から珍しく声をかけられた

確かに興味はない
喜助から頼まれたから来ているといってもいい
しかし、人と違う流れを生きてきて、友達という存在に憧れていたことも事実
興味がなくても、たとえ喜助に頼まれていなくても、誘われたのは心の底から嬉しかった


「確かに幽霊とか心霊現象とか胡散臭いし、興味ないけど……友達とこういうわいわい出かけるのって楽しいから
有沢さんも興味なさそうだけど、楽しいでしょ?」

「そうだね、私も楽しいや」


あいつらに言うとうるさいからナイショね、と有沢は無邪気に笑った





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廃病院の周りは思っていた通り人だかりができていて、それぞれ見やすい場所にと自然に分かれた
黒崎と朽木から近すぎず遠すぎず、視界に入る位置に落ち着いた
左隣に井上、有沢と並ぶ

目の前の廃病院を見るとそこには地縛霊――半虚が鎮座していた
番組スタッフが廃病院の敷地内に踏み込んだことにより、ヤツは姿を現し、雄叫びを上げている


「……っ」


地縛霊はほぼ思念といっていい
心に深く思っていることをそのままさらけ出しているということは、その声量は相当で、嫌にお腹に響く

この感覚は彼女らにはわからないし、放送が始まったらどこか別の場所に移動しよう
そう考えていた時に有沢が信じられないことを言った


「なに、この声……」

「!……有沢さん聞こえるの?」

「たつきちゃんと智佳ちゃんも?」


霊の声はもちろん霊力のない人には聞こえない
有沢も井上も私が転校してきたころは全く霊力がなかったはず
なのになぜ今になって彼女たちは地縛霊の声が聞こえているんだ

理由は違えどそれぞれに緊張が走る


『これより撮影を開始します!』


スピーカーを通して聞こえる声に、観衆がわく
四方八方から聞こえる雄叫びや黄色い歓声に地縛霊の声がかき消される

彼女らの意識もテレビに変わり、一先ずホッとする
が、疑問は頭から離れない
彼女らの霊力が変わるきっかけがあったとすれば、死神化した一護に助けられたこと
だとすれば、茶渡泰虎ももしかすると声を聞き取っている可能性が――


[お゛あ゛あ゛あ゛あ゛]

「な、なに……?」

「あの、インチキ霊媒師っ!」


さっきよりも苦しそうな地縛霊の声にハッと意識が戻ってくる
霊媒師が地縛霊の開きかけていた胸の穴を無理やり開こうとしているのだ
穴が完全に開けば、ヤツは虚になってしまう
おおかたあの霊媒師はそれをわからずにやっているのだろう
無意識に舌打ちしてしまう

声が聞こえない人たちは霊媒師のパフォーマンスに歓喜するが、有沢と井上は声がはっきりと聞こえているようだ

霊媒師が更に穴を広げようとすることで、地縛霊の声も大きくなる


「やめろ!」


ある一角がざわつき始め、聞き覚えのある声が耳に届いた。黒崎一護だ
しかし、こちら側の緊迫した状況をスタッフが分かるはずもなく、周りに配置されていた警備員たちに取り押さえられてしまったようだ
咄嗟に朽木ルキアを探すが、彼女もまた一護と同様、警備員に捕まってしまった

このままではあの霊が虚になってしまう


「クソッ」

「あ、智佳ちゃん!」


井上の制止の声を振り切り一護たちの方向へ人混みをかき分けていく

井上や有沢の視界から外れたことを確認しつつ、ポケットに忍ばせていた義魂丸を取り出す
あまり人のいるところでは万が一見られる場合もあるため使いたくはなかったが、一人であの人数の警備員から彼らを解放するのは困難だ
それならば私が直接止めた方が速い

しかし、義魂丸を口の中に放り込もうとする腕を誰かに捕まれた


「こんな大勢がいる場所でなにしようとしてるんです?」

「喜助!」


喜助の後ろにはテッサイやジン太、雨もいる
そういえば別行動しているんだった


「黒崎一護が捕まっている」

「それぐらいこっちで何とかしますよ!」


扇子を仰ぎながら笑顔でいう喜助は私の頭を一撫でした後、テッサイたちを連れて騒ぎの中心へと紛れていった

その後、黒崎一護は喜助の手により死神化することができたが、地縛霊は虚になってしまい、そのまま戦うことになった
結局私はこの戦いが終わるまで何もできないままただその場に立ち尽くしていた






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