nao短編

□変わる瞬間
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「ちょっとこっちに来いよ!」


直と一緒にお出掛けしてる最中に
同級生の男にバッタリあって
つい話し込んでしまっていた


それをちょっと離れたことろから見ていた彼
直が、そんな私に堪忍袋の緒が切れてしまったようだった


「痛い!痛いってば!
ごめん!久々だったからつい話が――」


直に腕を引きずられながら歩いていたら
急に立ち止まる


『嫌だ…』


「え?」


『嫌なんだよ!男と話してるってだけで嫌だ!』


「ちょっ!どうしたの?」


『お前は?俺が女と、もし一緒にいて話し込んでたら?
嫌じゃない?!俺は嫌だ!
のほほんと見てるなんて出来ないよ!
俺に、こんな激しい感情今までないと思ってた
自分でも知らなかった感情が
お前と出会ってから溢れ出して止まらないんだよ!」

初めてだった

こんなふうに私に気持ちぶつけてくるのは…

今までクールに装ってきて
それを一気に崩してでも我慢出来なくて吐き出したような感情を

私は不謹慎かもしれないけど
ちょっと可愛いと思ってしまった


『な、なんだよ 何か言いたいことあるんだろ?
何だよこれ…かっこわりぃ…』


直の口から聞いたことがない言葉が連発して
私は唖然としてしまった

そして直の顔が急に赤くなった


「ううん、かっこいい…直はかっこいいよ
それに嬉しかったよ
今まで私、そんなに好きになってもらえてないのかなって不安だったから…
それに私のほうこそごめんね」


『びっくりしたよな…ごめん…』


男と話してたって
自分は別に関係ないみたいな顔を今までされてきて
私ばかり直のこと好きなんだなって思ってた

でもちゃんと好きでいてくれてたんだね


「そんなに嫌だったの?
そんなに私のこと好きだったんだ?フフ」


『あ〜そうだよ!悪いかよ!
どうしようもなく好きだ!
俺がこんなに独占欲強くなったのは、お前のせいだからな!』


「私?!」


『そうだろ?他の男に向かって…あんな顔…
許されないぞ全く!
ホントどっかに閉じ込めたい気分だよ!』


怒ってる
怒ってるんだけど一生懸命なその顔もまた可愛くて
怒られてる気分にはなれなくて
逆にからかってしまいたくなるくらい


「フフフ」


『なんで笑う?!笑うとこじゃないだろ!』


「今度から冷たい態度とったら他の男の人と楽しく話しちゃお」


『ばっ!調子に乗るな馬鹿!』


直に抱き締められた腕はちょっと乱暴だったけど
強くて暖かくて
心地よくて、ここはずっと私の居場所であって欲しいと願った



『もうあんな顔他の奴に見せるなよ…ったく…どっから覚えてきたんだよ…あんな顔…』

抱き締められながら言われる直の気持ちが
私の胸にも振動で伝わる
付き合いはじめて
今までこんなに嬉しかったことはないよ

私は今、世界一幸せ者だと実感していた













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