DARKPOEM
□狂気
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そこに少女が居た。
少女はしゃがみ込んで何かをやっていた。
私はすごく気になったので、覗き込んだ。
少女は蝶の羽をむしっていた。
それも特別に綺麗なアゲハチョウを。
私は何故か、悲しくなっていた。
少女は、無邪気に笑っていた。
蝶は少しずつ動かなくなっていった。
動きずらそうにもがく蝶は、まるでブリキ人形のようにギィギィと、ただ生を求め、もがいていた。
ある日少女に殺された蝶が、蟻に運ばれていた。
先日まで華やかに舞っていたであろう蝶は、蟻に食い千切られている、「何らかの虫」に姿を変えてしまっていた。
まだ残っている複眼が「私はまだ飛んでいられたはずなのに」と、私にその無念を訴えてきていた。
私は、その蝶の姿に自分を見た気がして、目が離せなくなっていた。
ああ、私もこんな風に崩れ落ちて、それを人のせいにしている、と。
先日の少女がどこからかやってきて、蝶を運ぶ行列に不快感を抱いたのか、蟻を踏み潰し始めた。
その時の彼女の顔は、まるで自分が正義だと言わんばかりに、ピエロのような表情を歪ませていた。
私は恐怖を抱きながら、思いだした。
ああ、彼女は過去の幼い私であったのだと……。