5.
「それであなたシルバー好きなのに、よりによって本人に、好きにならないって宣言しちゃったの?」
時は流れて放課後。
今日の生徒会室は、先輩方は所用があるらしく、シルバーも家の用事があるらしく、オレとクリスだけだった。
クリスは先ほど頼まれた仕事をテキパキと片付けながら、オレの話というか愚痴に耳を傾けてくれてる。
「そ。まあ……言うつもりはないから良いっちゃ良いんだけどよ」
「……ほんとあなたってそういうとこ不器用よね…」
思いっきり溜め息をつかれた。
だけどクリスは、心底呆れてもオレを見放さないし、否定しない。
どんなオレでもこいつは、笑顔で、心配そうな顔で見守ってくれる。
多分そこが他の人間と一線を画するとこなんだろうな。
だから一緒にいてすごく楽。
書くことを間違えたのか、クリスはガシガシと思いっきり紙に消しゴムをかけた。
「分かってっけどさ……あんな頭ごなしに言われたら腹立つじゃん」
「そうだけど……あなた達っていつもそんな感じじゃない。それに、言わないんでしょ?」
――好きだって。
消しカスを机の隅に集めながら、クリスは書類に向けていた視線を、オレへと移す。
水晶玉のような澄んだ双眸に、唇だけで笑んでいるオレの顔が映っていた。
「言わねーよ。なんせ『ダチ公』だからな」
「だったら、落ち込んでたって仕方ないじゃない」
「だよなぁ……でもなんか頭ん中ぐるぐるして吐きそうだったからさー」
そう。
あの銀の瞳と小さな嘘が脳みそをぐるぐる掻き回して、どうしようもない程気持ち悪かった。
シルバーが好きなのに、好きにならないなんて、そんな小さな嘘。
ただ、それだけなら。
それだけならいつもの許容範囲内の小さな嘘なのによ。
ただ。そう言った時のシルバーが。
あいつの目が、ほんの少しだけ、
……なあんて、気のせいっつーか多分錯覚なんだけど。
「…あんまり気にしすぎると保たないわよ」
「そうだなー…二週間もあんだしな」
「……そうね」
どこか物憂げに呟いてクリスは視線を窓の外の景色へと移したその時、生徒会室のドアが思いっきり強く開けられた。
「――っ!?」
「――ゴールドに!」
「お知らせがありまーす!」
「だがしかし!君なら大丈夫!」
「………………何してるんスか先輩達」
そこには大仰なポーズを決めた先輩達が――セリフ順に言うと、レッド、ブルー、イエロー先輩がいた。
……っていうかこんなに楽しそうなイエロー先輩初めて見た…。
「……とりあえず中に入れお前ら」
「えっ、ちょっ三人いっぺんは無理だろ!」
信号組三人まとめて一気に、グリーン先輩は生徒会室に押し込んだ。
さすがグリーン先輩、容赦なし。
「ゴールド」
「……なんスか?」
「シルバーが家の都合で一週間来れなくなった」
は?
「だからその一週間はレッドとデモンストレーションをやれ」
はあ!?
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